担保物権全般の横断的な知識を確認する問題でした。
問題は…簡単なので特に肢ごとの検討は…今回はやめておこうと思います。
ただ…気になる肢を2つほど…。
肢の1と…正解になる肢の5だけ見ておきます。
肢1 これらの担保物権は附従性を有するから,目的物が第三者に譲渡された場合であっても,被担保債権から独立して消滅時効にかかることはないというのが判例である。抵当権の論点としては…有名ですよね。
396条の反対解釈から…第三取得者や後順位抵当権者に対する関係で…抵当権のみの消滅時効が認められています。
(抵当権の消滅時効) 第三百九十六条 抵当権は、
債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
最近の過去問では…
質権の消滅時効に関して…
過去問平成18-7-オにありますね。
質権に関しても…361条で抵当権の条文を準用しています。
(抵当権の規定の準用) 第三百六十一条 不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。
では…気になる肢をもうひとつ…
今度は…正解肢になる5です。
肢5 これらの担保物権は不可分性を有するから、被担保債権が弁済により減縮しても,担保権者は目的物の全部について権利を行使することができる。「担保物権は不可分性」に関する問題ですが…これに関しては…かなり印象に残っている過去問があります。
それは…
平成16-14-ア僕にとっては…勉強方法がわからなくなった問題でもあります(笑)
まずは…
思い出の平成16-14-アを見てみましょう(笑)
(平成16-14-ア)
先取特権は,その被担保債権の全部の弁済を受けるまで,目的物の全部につき効力が及び,約定担保物権である抵当権とは異なり,当事者の特約によってこの性質を排除することはできない。
→×不可分性の問題です。
担保物権に関する規定は任意規定なのか?つまり…
不可分性は当事者の特約によって排除できるのか?…って…問題です。
結論は…任意規定なので…特約で排除可能…ってことになり…肢自体は×になりますが…
「根拠は?」って聞かれると…根拠がわかりません。
一般には…
「そういう見解もある」とか…「通説だから」…なんて理由づけされているようです。
昔…どの記事だったか…僕のブログのコメントにこんな趣旨の批判が入ったことがあります。
「条文,判例,先例以外はいらない!」僕も…そう思います。そして…今でも…そう思ってます。
なので…択一の問題集なんて…ダラダラ解説なんかいらないと思っています。
問題の解説は一行で根拠だけ書いてくれてる方が…僕には向いています。
「この問題の答えは…○だ。根拠は…条文」
「この問題の答えが…×だ。根拠は…判例」これだけで…いいと思ってます。
TU講座の問題の解説は…こんな感じです。僕が…TU講座にハマった理由は…ここにあるのかもしれません。
ただ実際…択一の問題において…「条文,判例,先例」だけで答えが出せない問題が出ていることに気付きます。
先ほど紹介した…不可分性のような問題ですが…
実際に…このような問題がでる以上…
「条文,判例,先例だけでいい!」…なんて言ってる場合ではないのに気付きます。
かといって…学者の先生の本を読みあさるわけにもいかないですし…そんな時間もありません。
「たまたま出ただけだよ」こんな感じで片づけることも簡単ですが…
現在の会社法の問題でも…立案担当者の見解がベースになっている問題も出題されているようで…いつまでも…「条文,判例,先例だけ」って固執するのもどうかと…。
でも…手を広げることはできない…。
そんな状態で…過去問を分析しながら…
「条文,判例,先例」+「立案者の見解」や「ネタ本」となっている本からの新作問題がとける講座があれば…飛びつきません?(笑)
僕は…飛びつきました(笑)
よく…他の受験生の方に…「TU講座っていいの?」って聞かれます。
的中率はもちろんですが…一番のお勧めポイントは…このあたりかなぁ…と思います。
以上…「条文,判例,先例」だけで…全部の問題が解けるわけではないのを感じた…思い出の問題でした(笑)
では…司法書士試験過去問とのリンクを確認します。今回は…担保物権全般の比較問題なので…過去問も…担保物権の比較問題をピックアップです。
まずは…担保物権の比較問題のデータから…
平成18-14
留置権,先取特権,質権,抵当権,譲渡担保権の比較
平成7-14
留置権,先取特権,質権,抵当権の比較
平成6-11
留置権,先取特権,動産質権,不動産質権,抵当権の比較
平成4-9
留置権,先取特権,抵当権,譲渡担保権の比較
平成3-10
留置権,先取特権,動産質権,不動産質権,抵当権の比較
平成元-4
留置権,不動産質権,抵当権の比較
昭和62-10
留置権,先取特権,質権,抵当権,根抵当権の比較結構…同じような感じで比較されています。
平成18年に…久し振りに
譲渡担保権が登場したのは注目ですね。
今後の譲渡担保権の活躍が期待されるところです(笑)
では…今回は実際に問題を打ち込んでみました。
セミナーの「択一式過去問集」を見ながら打ち込んでいますので…誤植等は…過去問をご確認ください。
通勤電車の中で…ちょっと解いてもらえると…打ち込んだ努力が報われます(笑)
問題のあと…すぐに答えがあるので…ご注意くださいね。
(平成18-14)次の発言は,AからEまでの5人が,留置権,先取特権,質権,抵当権又は譲渡担保権のいずれか一つを代表して,各担保権の性質について述べたものである。AからEまでのうち
質権を代表している者は,後記1から5までのうちどれか。なお,複数の者が同一の担保物権を代表していることはないものとする。
Aの発言 私もBも不可分性があるけれど,私はBと違って法定担保物権だよ。
Bの発言 私もCも付従性を有しているわ。
Cの発言 私は,物上代位性がなく,Dと異なり典型担保なんだ。
Dの発言 私は,不動産に対しても設定できるよ。
Eの発言 私は,債権に対しては設定できないんだ。
1 A 2 B 3 C 4 D 5 E
(正解) 2(平成7-14)次の記述は,民法に規定されている留置権,先取特権,質権又は抵当権のいずれか1つの担保物権についての説明を列挙したものであるが,この中に1つだけその担保物権に当てはまらない説明が混在している。その説明はどれか。
1 この担保物権は,目的物が不動産であっても登記をすることができない。
2 この担保物権は,当事者間の合意によって成立するいわゆる「約定担保物権」である。
3 この担保物権が実行されるまでは,設定者は,目的物を使用収益することができる。
4 この担保物権は,目的物が第三者の不法行為により滅失した場合における所有者の当該第三者に対する損害賠償請求権についても行うことができる。
5 動産を目的物として,この担保物権を設定することはできない。
(正解) 1(平成6-11)(?)に掲げた担保物権につき(?)に掲げた性質又は効力が認められないものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
(?) (?)
ア 不動産質権 ―収益的効力
イ 留置権 ―物上代位権
ウ 動産質権 ―付従性
エ 先取特権 ―優先弁済的効力
オ 抵当権 ―留置的効力
1 アイ 2 アエ 3 イオ 4 ウエ 5 ウオ
(正解) 3(平成4-9)担保権の消滅に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし,誤っているものはどれか。
1 留置権の目的物をその所有者が留置権者に無断で持ち出した場合でも,留置権者が占有回収の訴えを提起したときは留置権は消滅しない。
2 債務者は相当の担保を提供して留置権の消滅を請求することができる。
3 先取特権の目的である土地の所有権を取得した者は,先取特権者に提供して承諾を得た金額を払い渡し,またはこれを供託して先取特権を消滅させることができる。
4 債務者は被担保債権の消滅時効とは別に,抵当権自体の時効による消滅を主張することができる。
5 譲渡担保の目的である印刷機を,設定者が第三者に譲渡した場合であっても,当該第三者に対し占有改定により引き渡したときは譲渡担保権は消滅しない。
(正解) 4(平成3-10)担保物権の目的物から生じた果実等に関する次の記述中,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 留置権者は,留置物から生じた法定果実を収取し,他の債権者に先立ってこれを被担保債権の弁済に充当することができる。
イ 不動産売買の先取特権の目的物を賃貸された場合において,先取特権者が賃料を差し押さえたときはその上に先取特権の効力が及ぶ。
ウ 不動産質権者は,設定行為で定めない限り目的不動産の使用及び収益をすることができない。
エ 動産質権者は質物から生じた天然果実を被担保債権の弁済に充当する場合には,まず利息に充当し,次いで元本に充当しなければならない。
オ 抵当権の目的物に対して差押えがあった後は,抵当権の効力はその目的物から生じた天然果実に及ぶ。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
(正解) 5(平成元-4)不動産に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 無主の不動産は,先占によってその所有権を取得することができる。
2 共有物を分割しない旨の特約は,動産についてはすることができない。
3 不動産については,留置権は成立しない。
4 不動産質権は,登記をしなければ効力を生じない。
5 抵当権の目的は,不動産に限られない。
(正解) 5(昭和62-10)担保物権に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 留置権者は,債務者の承諾がなければ,留置物に質権を設定することができない。
2 先取特権を有する者は,債務者の承諾なくても,その権利を放棄することができる。
3 質権者は,設定者の承諾がなければ,質物を担保に供することができない。
4 抵当権者は,設定者の承諾がなくても,同一の債務者に対する他の債権者に抵当権を譲渡することができる。
5 根抵当権者は,設定者の承諾がなければ,根抵当権の一部譲渡をすることができない。
(正解) 3以上です☆
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